東洋医学の考え方
西洋医学とは違うアプローチで体に起こる不快な症状をやわらげていく東洋医学。この考えのベースには自然と人間の密接な関係があります。
人は自然界の中で生活しており、季節や温度変化に合わせて自身の体調も調節し、コントロールしています。しかし、何らかの原因で心と体のバランスが崩れると、体内の循環が停滞、不足、過多の状態となり、病気の要因となります。
東洋医学では気候の変化、精神的ストレス、不摂生な生活などの様々な変化が要因となり、病気が引き起こされます。
長期的に一定の内的ストレスや外的ストレスを受けているとそれが情志に影響し、発病の原因になると考えられます。
病気の原因は内因と外因
内因とは
体の中から生じる感情の変化です。。代表的なものは七種類あるので、七情(喜・怒・憂・思・悲・恐・驚)ともいい、五臓との結びつきから五志ともいいます。
「五臓六腑」という言葉を聞いた事がありますか?「五臓六腑」が働いているから、私達は生きています。五臓とは【 肝・心・脾・肺・腎 】六腑とは【 胆・小腸・胃・大腸・膀胱・(三焦)】がバランスを取り合って、体を良い状態に保っているのです。しかし、五臓と七情の関係が乱れると、以下のようなことが起こります。
五臓と七情の関係
肝 | 怒りすぎると肝を傷つける |
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心 | 喜びすぎると心を傷つける |
脾 | 思いすぎると脾を傷つける |
肺 | 悲しみ憂いすぎると肺を傷つける |
腎 | 驚き恐れすぎると腎を傷つける |
七情(喜・怒・憂・思・悲・恐・驚)といった情緒はぞれぞれの臓腑と密接に関係しており、過度な気持ちの変化は臓腑を傷つけてしまいます。気持ちを楽にリラックスした生活を心がけましょう。
外因とは
自然界の気候の変化により、人体に害を及ぼすもので、「風・寒・暑・湿・燥・火」の六種類に分けられます。これらの過不足、あるいは異常気象となったりすると、人体の適応力や抵抗力が衰え、病気を引き起こす原因となります。
春 | 風邪(ふうじゃ)が旺盛・強風 |
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夏 | 暑邪(しょじゃ)が旺盛・暑さ |
長夏 | 湿邪(しつじゃ)が旺盛・湿気 |
秋 | 燥邪(そうじゃ)が旺盛・乾燥 |
冬 | 寒邪(かんじゃ)が旺盛・寒さ |
日本には四季があり、季節の風景を楽しむことができます。しかし、過度な季節変化はいくつかの外因が合併して(風寒、湿熱、風寒湿など)人体を侵すこともあります。季節変化には注意が必要です。
人体に害を及ぼす具体例
- 季節や自然の変化(暑さ・寒さ・雨・風など…)
- 環境の変化(引っ越し・新しい職場・人間関係によって生じる喜怒哀楽)
- 生活習慣(過度の労働・飲食・睡眠・運動不足)
- 事故(転倒・虫さされ・打撲・すり傷)
- 妊娠・出産・加齢・・・・etc.
などのことが考えられます。
東洋医学の治療法
最近、予防医学という言葉を耳にします。しかし、東洋医学ではすでに二千年以上前から、「未病を治す」といって、病気ではないが、健康とはいいがたい状態を早期に予防してきました。
病気を予防することができる医者が「名医」と言われていたのです。また、「医食同源」の考えも浸透し、体質に合わせた食養生も病気の予防に大切であると説いていました。
病気の予防に大切な「気」「血」「津液」
東洋医学の基本は「気」「血」「津液」です。人が生命活動を営む源となるもので、この三つが滞りなく流れていれば、病気にならないと言われます。
「気」とは
季節、空、大地、海、植物、動物、人間、物質など私たちの身の回りは生命や物で満ち溢れています。これらはどのようにして生まれてきたのでしょうか。
古代中国の人は、全て「気」から成り立つ、という考え方をしてきました。この思想を「気一元」といいます。「気」とは目には見えないエネルギーと考えていただくと解りやすいでしょう。人は自然の中から生まれて自然とともに生きる存在なのです。
私たちの全身にはエネルギーが流れる「気」のルートがあり、これを経絡といいます。「気」のネットワークともいえます。この経絡を流れる「気」によって私たちの身体は営まれているのです。
「気」が全身を滞りなく流れていることが健康な状態で、逆に「気」が不足したり、渋滞したりすると病気になりやすくなります。病気も反対から読むと「気の病」と読めますね。気の在り様は私たちの体にとって重要です。
このようにして「気」の流れるルート上にあるツボに鍼や灸をすると、「気」の流れが良くなり、全身に「気」が満ち溢れて、病気が治っていくのです。
「血」とは
血液を東洋医学では「血」(けつ)といいます。西洋医学の血液の働きと基本的には同じですが、「血」は「気」の働きによって動かされています。東洋医学の萌芽期、人は大量の出血で死ぬという客観的事実から「気」という目に見えないものよりも、より具体的な「血」に注目したと考えられます。
「血」は「気」の流れの滞り、乱れ、過不足の影響を受けやすいとも言えます。
「津液」とは
「津液」(しんえき)とは体内の水分を総称したものです。
体表面を潤し体温調節に関係したものと、体内をゆっくり流れ、骨や髄を潤すものがあります。「津液」の源は飲食物で、胃腸で消化吸収された水様の物質です。
「津液」も「血」と同じように「気」の滞り、乱れ、過不足の影響を受けます。
健康は「五臓」・「六腑」のバランス
日常生活でダメージを受けても身体は回復するための自然治癒力が働きます。「気」「血」「津液」が滞りなく流れることで、「五臓六腑」がお互い影響しあってバランスを保ち、健康でいられます。自然治癒力とはどういうことでしょうか?日常生活の中、具体的に考えると
①寒暖の変化
気温が下がると寒いと感じ、気温が上がると暑いと感じます。そこで、身体の声に耳を傾けて、衣服を脱着すれば風邪をひかずに済みます。
②睡眠不足
体は睡眠を要求しますので、眠たくなります。そこで、身体の声に耳を傾けて、睡眠をとれば回復します。
③暴飲暴食
当然胃がもたれたりします。そこで、身体の声に耳を傾けて、食事を制限すれば、回復します。
④運動不足
運動不足が続けば、脚のむくみ、腰痛、肩こりの原因になります。そこで、身体の声に耳を傾けて身体を動かし運動すれば回復します。
人体は環境の変化やダメージに対し、何らかのサインを出しています。このサインを見逃して、不摂生を続ければ自然治癒力だけで健康を守ることはできません。
病気になると五臓六腑のバランスの状態が悪くなり、身体の機能が上手く働きません。東洋医学は、この五臓六腑のバランスを整え、「気」「血」「津液」をスムーズに流れるように治療をします。